大腸ポリープ切除(日帰り)と大腸ポリープについて.久留米市の井星医院.
大腸ポリープ切除の予約は,大腸カメラ(大腸内視鏡)の予約で受け付けています.
大腸ポリープの自然経過
大腸ポリープ自体は良性のものが多いですが,がん化する可能性があり,早期に発見し取り除くことでがんの予防につながります.
大腸がんの多くは元々,良性ポリープ(腺腫)に由来しています.

大腸ポリープの治療法
コールドポリペクトミー
内視鏡の先から金属の輪っかを出して,熱(電気メス)を使わずに,機械的に絞扼して切除する.
多くの医療機関で実施される.日帰り治療が多い.9mm 以下の非有茎性(茎がない形態)のポリープが対象.
難易度:低 (★)
費用:以前のポリープ治療(EMR)と同等の自己負担.入院の場合は,別途費用が必要になる.
長所
手技が簡易で,必要な材料が少ない.
適切な選択を行えば,後出血や穿孔(腸に穴が開く)などの合併症は,完全にゼロではありませんがほぼ発生しない.
短所
体への負担は少ない一方,方法の特性上,病変の取り残しのリスクや,標本評価が難しくなる場合があり.そのため,治療の質は適切な病変の評価(内視鏡の診断精度)にも依存する.受診者の費用負担は保険診療の範囲内の算定.EMR(後述)と同額.
EMR
(内視鏡的粘膜切除術)
高周波装置(電気メス)を用い,金属の輪っか(スネア)を用いて切除する方法.
数mmから2-3cm程度のポリープや,小さくても がん(早期がん)が疑われる場合に選択される.
難易度:低から中(★★ - ★★★)
費用:手術自体の費用は,コールドポリペクトミーとほぼ同等.入院の場合は比較的高額になる.
長所
コールドポリペクトミーよりやや深めの層での切除になるため,ポリープ や癌の根治度は高く,完全な病変の切除を目指す治療.比較的短時間で終了する.
短所
大腸の部位や,形態(平坦なもの)よっては難易度が上がり,合併症(出血,穿孔:腸に穴が開く)リスクに配慮が必要.その場合は,経験豊富な医師による実施や,高度な体制のある施設での対応が適切.
ESD
(内視鏡的粘膜下層剥離術)
高次医療機関,大腸の専門病院で実施される,早期大腸がん(+ポリープの混在)に対する,内視鏡手術.現在では、ESDは高度のあ専門性と十分な実績を要する治療であり,内視鏡治療の専門性を示す重要な指標の一つ。
食道がん,胃がん,十二指腸がん,咽頭がんなどの治療に共通する治療.
病変が条件を満たせば,数cm以上の大きさでも治療可能.
難易度:高 (★★★ - ★★★★★)
費用:ポリープ切除よりも高額.入院期間も長い(5-10日).
長所
上記のEMRではサイズが大きいなどの理由で切除不可能であった病変も,ESDにより切除可能になった.
短所
治療時間が長い.
充実した設備,合併症に備えた外科手術体制,消化器外科医のバックアップが必要.
治療手技の習熟に時間がかかる.
治療の例
CSP (コールドポリペクトミー)
治療が必要なポリープの中で,主に小さなポリープを対象とした,簡便な治療法です。日帰りでの大腸ポリープ切除の例です.

一般的な大腸病変の治療のサイズ(参考)

ESD (内視鏡的粘膜下層剥離術)
大腸がんに類する悪性腫瘍の大腸内視鏡を用いた切除の様子です。大腸の壁は厚さが3-4mm程度しかなく、傷つけたり穴を開けたりしないように数cmのサイズの病変を切除するため、細心の注意が必要な治療です(引用元を下部に記載)。

ESD (自験例)
大腸(胃,食道に加え)の多数のESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の経験があります。一般的なサイズでもESDは高度技術を要しますが,自験例の中で大きなもの(15 x 8 cm ) は,一般的なサイズよりも遥かに大きな,がんのケースでした.治療前の診断通りの病変で,良好な治療経過でした .

大腸ポリープ(腫瘍)の治療は「結果が変わる手技」
関連する客観的指標について
血液検査やレントゲン検査のような装置中心の検査とは異なり,内視鏡は施行医の操作手技・観察・判断が結果を左右します.当院では以下の点に留意し,受診者,病変毎に適した質の高い内視鏡を行います.
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小さなポリープとは言っても:ポリープ切除は,小さなおとなしそうな病変(ある程度の期間は無治療でもいい,とも言えますが)であれば,治療の手技自体は簡便・安全なものです.しかし治療の安全域が小さければ取り残しや再発の危険があります.また小さくても悪性の可能性があるなど,一段上の手技(EMR)の方が望ましい場合もあり,適切な選択が必要です.
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ポリープ発見率は別の問題:大腸内視鏡の質の目安として,病変発見率(腺腫発見率, ADR)という指標がありますが,あるポリープの治療をうけても,他のポリープを発見出来ずに多数残したら,受診者に強いる手間・負担,の割に治療の意味が薄れます。大腸の曲がり角の内側,ひだの裏など,発見しにくい場所により重要な病変を見逃していないか,ということです.
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過剰治療の可能性:直腸やS状結腸によく見られる治療不要な病変(過形成性ポリープ)を見誤り,治療していないか。白色調の平らなポリープで,一見してそれとわかることが多いものです.
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生検(組織検査)の対象について:大腸ポリープは,観察により質的な診断まで可能であるため,明らかに良性に留まるポリープ(=大多数のポリープ)の生検の必要性は低い。
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合併症予防に関して:治療後に,必要十分な出血予防が講じられているか。
当院では以下の施行医の専門性,に関わる客観的指標をもとに,受診者が安心できる治療をおこないます。
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症例集積施設での高難易度治療(ESD)を含む,多数多種の治療経験
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20年間の診断的/治療的内視鏡の経験,消化管 (胃腸) 疾患診療の濃密な専従期間
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日本消化器内視鏡学会の認定の指導医(専門医を目指す医師の指導的立場)
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消化器疾患,消化器内視鏡に関する多数の学術的(臨床+研究)発表,論文執筆
最終監修:2025年9月27日(井星 陽一郎 医師)






